雨模様の夕暮れにでもあるような湿気が胸いっぱいに詰まっていく。聖なる乙女の背後から漂う悪意というより、無垢な真偽の揺らいぎが肌を突いた。
日下イツキの目線で描かれた世界は、どこか教典のページを開いているように読みにくい。彼女が持ち寄ったのはただの知識ではなく、自らの心臓を押さえつけた日々の証拝だった。塔のような教会の壁際に佇むタリアの姿を見つめた瞬間に、何かが裂ける音が耳鳴りとして響いてくる。それ以上の説明は要らない。だってそこにはすでに、神罰よりも鋭い闇があるのだ。
昼休みの放课后、校舎の屋根裏で盗聴していたわけではない。誰もいないはずの階段室で、二つの呼吸のリズムが交差していることに気づいたことくらいしかなかった。タリアの腹に現われる花びらの纹章は、単なる装飾じゃない。それは彼女の中に潜んでいるすべての矛盾を可視化したほどの存在なんだ。
そして何故か、そんな場所に立ち竦む自分自身の虚しさを感じざるを得なくて。「好き」という感情がどうやって禁断の境界線を超えたのか、理解できないままに今宵を迎えた。暗くなった教室の窓際で、手帳のページを閉じて見た途端、喉の奥がカチコチになる。
今日の帰り道、駅前そば屋の暖炉の前に座って考えていたことがある。温かい汁が喉を通ると、これまで感じてきた全ての葛藤が水面に映し出されてきた。そのとき初めて分かったことがあった。聖なる乙女の秘密とは、なんなのか。答えを探そうとしたけど、自分の心がもう答えているような気がした。
ちょっと待って。あの本、DMMブックスとか.KindleJapanで読めてるみたいだからね。とりあえず、読んでみてほしい。意外とすぐに終わってしまうかもしれないけれど、忘れられない出来事がきっとあるだろう。
深夜の図書館で見つけた一冊は、まるで闇の中で光るように照らしてくれる。廊下の灯りが揺れるたび、机の上のノート紙が震え始める。それがなぜだか、胸の鼓動と同じリズムだった。タリアが抱きしめた木箱を開ける瞬間に漂う香りは、かつてないほど鋭くて切った。甘い蜜よりももっと深淵へ誘ってくれるものがあった。
朝早くまで続くバスに乗っていると、窓外の街並みが次々と後ろに消えるように感じる。でもこの物語の終わりなんか決まってなくて、ただ目の前からなくなっていく景色を見つめていた。制服姿の人たちが笑顔を見せながら通りすぎるのも、何かの演出のように思えてくる。どんなふうにして、こんなにも簡単に世界が変わって見えるんだろう。
電車の窓際に寄せる指紋が、まだ湿っていた。昨日読んだシーンが脳内で繰り返されはじめた時、突然涙が出てしまって驚いてしまった。いつものカフェでコーヒーを飲みながら読むなら、それだけで済んでしまうのに。なのにこうして眠れず、スマホ画面に向かって何度もチェックしてしまうのは、一体どこを目指してるのかも分からない。
あの舞台装置みたいな空間に迷い込んだのは、偶然じゃなかったのだ。タリアの瞳に写る闇の色合い、あるいは自分が知らない他の人の影がそこには隠れていた。でも全部が嘘だってわかると同時に、どこかで真実だと信じたくなってくる。そんなパラドックスが絡まったまま、また次の頁を開けてしまうのが不覚というものだ。
最近よく考えるようになったのは、恋愛という概念自体がどういった形をしているのかということだ。教科書には載っていないことも多くて、まるで謎解きゲームのようになってきてる。だけど答えを探すよりずっと大切なことは、すでにそこにいる人たちと過ごすこと
深夜の駅ホームで降りそそぐ光が、彼女の髪を揺らしながら描く陰影。その瞬間に感じる違和感が、いつもと同じはずだった日常から抜け落ちていることに気づく。朝まで続く夢の中で見たことのある景色が、現実と交差しているような錯覚。目を閉じても心臍が震えるほど、あり得ぬほどの温度を感じさせる。
教会の鐘楼から流れる風が、誰かの息遣いや胸鳴らせていたように思うことがある。神父さんが手紙を届けるとき、封筒の角が擦れた音が耳にする。それを見逃せば終わってしまうかもしれないけど、なぜか立ち往生してしまう。ただの人間同士の交流なんかじゃない気がして、背筋が凍るように冷たい空気に包まれてる。
コンビニで買ったお菓子を食べるときに、甘さの中に鋭いうねりがあることに初めて気づく。蜜月期みたいに美味しいわけではなく、むしろ苦味が舌を刺激する。それが逆に喉につまり、吐き出したくなるくらい嫌悪感を呼び起こす。だがその反応こそが、自分自身に対する正直な証拠なのだろうか。
街灯の眩しさに瞼を上げれば、自分の存在意義が問われてくる。この世で生きることを選んだ理由が、どこにあっていいのか考え込んでしまう。教会の扉を叩けば答えが出るんじゃないかと思っていたけれど、実際に開けてみるとそこにはもう誰もいない。だから今更、後悔なんてできない。それでもやっぱり、同じ道を選ぶしかない。




