ワールドトリガーの感想:心が浄化で言葉を失う

世界で最も無駄な時間を使ってると気づいたのはいつだったかな。バスケットボール場でのバトルから始まる衝撃的なオープニングに飲み込まれた瞬間に、もう抜けられないってことが分かった。
物語の中身は単なる異能者が闘う話じゃない。それよりも、主人公たちの日常の中に潜む歪みが鋭すぎて目を離せなくなる。練習場で汗ばむ背中の質感とか、街角のベンチに座った時の温度差みたいな細かい描写が、どこか切なくて毒がある。特に森嶋くんと神崎ちゃんの絡みは、思わず顔を見合わせたくなるほどに心地いい。

ただ殴るだけで終わる戦術じゃ済まされないのが妙だ。敵味方に関わらず、それぞれが持つ理由が胸を締め付けるような存在になっていく。ある日突然現れた仮面ライダーのように、予測不能な展開が連続して襲ってくる。でもね、それこそがこのシリーズの魅力なんだと納得してしまう。

夕暮れの放課後、廊下を行き来する制服姿の人々の中で、自分だけが特殊能力を持っていることに気付き始めた気がした。あの日の出来事を忘れずに過ごしているうちに、なんだか眠くなる時間が減ってしまった。

※この世には通用しなくなった武器もあるけど、それでもなお人の命を守ろうとする意志っていうものは、やっぱり何か違う。

毎晩スマホを開けば新刊情報が待っているけれど、もっと手近なところで楽しめる方法もある。気になる人はぜひチェックしてみてほしい。

読後の空腹感が異様に感じるのもまた特徴。物語の隙間に潜む無垢な孤独が、まるで甘い飴玉みたいに喉元につきます。雨上がりの柏油路上で転びそうになった時、ふと思うのは「こんなにも世界が普通だったのか」という衝撃。そんな日々の中での小さな反抗心が、なぜか誰かの涙になるんです。
深夜の電車に乗って読んでいると、窓外の光景が本の文字と混ざって、いつしか自分の人生と一体化してるような錯覚に陥ります。たとえ明日から何も起こらなかったとしても、今日感じたことだけでも未来へ届けたいという願望が芽生えるんですよね。
意外と大人げてないんだけど、そこが逆に救われるところなんです。だって少年少女が抱く純粋な希望は、どんな強敵にも打ち勝てるくらい輝いているからです。そのエネルギーを感じ取ると、もう二度と同じ世界に戻ることはできないでしょう。
そして最も怖ろしくもありました。完璧な秩序なんてものがないことを知ってしまうと、当たり前が見えなくなって立ち尽くすことになりますよね。だけどそっちの方が真実なのかもしれません。だからこそ、ここで伝えられた思いは決して忘れてはいけないことなのです。

ある日の朝、廊下で出会った相手の目が突然冷たくなる瞬間。それがきっかけになって、これまで気づいていないこの世の歪みが胸いっぱい押し寄せてくるのです。制服姿の彼らが互いを見つめるとき、どこか背後にある闇の影が擦れ違うように感じられるほど、日常の表面と深層が鋏のように剥離してしまう。そんな細かい描写が、読んでいたはずなのに自分自身との格闘が始まってきてしまう原因になります。

通勤時間帯なら、電車の中で他人のスマホ画面とにらめっこしながら読み進めることもあるけれど、それだけで不思議と周囲の人々の呼吸が同期していくことがあります。人の顔の温度が一気に薄らいだ気がしたり、反対に肌身にしぼんで感じたり——どちらにしても何かが変わっているようで、どうやって再び同じルーチンを取り戻せるのかも考えさせられます。

特に印象的だったのは、「守るべきものがなくていい」と言うセリフ。ただの台詞ですが、それを言い切った人物の表情がとても清楚だったので、ずっと脳裏に焼き付いて離れません。今更ながら自分が守るものがあることに気付き始めて、あるいは失ってしまったことに向き合わなければならない現実に向かう準備ができていないことが痛くなりました。

しかし同時に、あの瞬間を乗り越えた先に見える可能性が信じられない程眩しすぎるんですよね。きっと生きていることで得られる唯一の武器である『感情』を使って、なんとかしようとすることを選択するしかないのだと思います。それは悲劇的な要素が多いけど、それでも踏み出してしまえば前に進み続ける理由になるのでしょう。

夕暮れ時の駅構内で紙飛行機を作っていた女の子たちを見て、少し息を呟きました。子ども達にとってはまだ遠すぎて理解できなくても、いずれその意味が伝わってくるんじゃないか

ちなみに配信はDMMブックス、Kindle、BOOK☆WALKERあたりで読める。

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