突然現れた異世界の魔法が日常を捻くれて吐き出す──そんな混沌の中に、どこか懸命な主人公の声がある。
魔女系女子たちとの摩擦が炸裂しそうなくらい、ありえないバランスが保たれているのが妙だ。普段から無邪気すぎる性格の入間くんが、ある日突然魔王に選ばれてしまうという設定だが、そこへ登場するのが完全なる反動役である。彼ら女の存在自体が物理的に周囲の温度を下げてるような気がしてくるほどだし、なんとも言えぬ緊張感が漂ってる。例えば通学路でも、いつものスイーツ屋さんの前を通ると、まるで敵地侵入みたいになって慌てふためくのだ。
ただそれだけでなく、彼の思考パターンってのはちょっと特殊なんだよね。魔法を使うごとに自分の気持ちを忘れそうになるようで、結局いつも後ろめたさばかりを感じているように見える。特に浴槽に入っているときなんか、水温にもまって心の中がぐちゃぐちゃになりかけてるのに、それでも頬杖ついて考える姿がまた切なくなる。
日常生活の中で最もストレスフルだった時間帯というのは、やっぱり夜遅くまで続く勉強時間だろう。いくら魔法を使えば解けそうな問題だって、誰かが見ていない間に消えてしまってたりして……。そんなときに限って、クラスメートが教室に集まり始めたりすると、もう爆発寸前に近づいている感じになるんだ。
ここで少し強調しておくけれど、この物語の一番すごいところは、何より人間ドラマとしての完成度にある。感情の起伏が激しくても、決して乱暴ではない。むしろそれが逆に胸を打つ。
最近はSNSとかでやたら話題になっていたけど、実際読んでみないとわからないくらい独特な魅力を持っている。気になるなら、きっとあなたにとって新しい楽しみ方を見つけるきっかけになれそうだ。
DMMブックス・Kindle(日本)・BOOK☆WALKERなどで気軽にチェックできるはずなので、ぜひ手元に置いてみてほしい。
深夜の自習室での出来事もまた、妙にリアルだ。電灯の明かりが瞼にかかるたびに、隣でうめき声を上げながら計算式を殴りつけている同級生たちが、まるで何かに憑依されたみたいに見えてしまう。その不思議な歪みこそが、「日常」の中に潜んでいる魔法の証しだった。気づかないうちに押し寄せてくる存在感に翻弄されると同時に、どこか懐かしささえ覚えるのはなぜなのか。
例えば毎朝、制服のボタンを外しているだけで無理やりテンションダウンさせるような、そんな些細な行為ひとつとっても、彼の世界にはちゃんと意味がある。それどころか、ただ立ち止まった瞬間でも空気が変わりそうで、そこから逃げるように歩いていくのが精一杯というほどだ。
そしてなんとも皮肉なことに、こんな状況下であれども、案ずることもなく前向きに生きていこうとする姿勢が、なんだか可哀想なくらい真面目で、それゆえに痛々しいのだ。だからこそ、読者の心を掴んで離さないのかなと思ってしまう。いつしか自分がその中に飲み込まれてしまっていて、どうやって抜け出していいものやらと考えさせられる。
そんなわけで、一度読み終えたとしても、またページを開けばあの香ばしい焦燥感が再現される。ちょっと待てっていう気持ちになっても、止められないのさ。意外かもしれないが、これは本当にあり得ないことじゃない。ただ、自分自身に向けられたある種の試練みたいなものだと感じる人も多いんだろうな。
この物語には不思議なバランスがあって、まるで甘くてもっともな蜜が滝のように流れるような快感を味わうことができる。入間くんの周囲では、誰しもが自分の常識を砕かれながらも、逆にその脆さを見つめ直すことになる。たとえば、授業中の突然の呪文発動によってクラス全体が音符に乗って飛ばされていったとき──そんな馬鹿げた出来事にも、なぜか胸が締めつけられてしまう。それは単なる笑いではなく、何かを失っているように感じさせる程の感情的インパクトだった。
日常生活の中で偶然訪れた小さな出会い一つ取っても、それがその後の人生の転機へ繋がっていく可能性を感じるのは、この作品ならではだろう。入間くんが関われば、どんな平凡な日常だって異質な光の中に包まれるようで、読者はまるで夢の中にあるような錯覚に陥ってしまう。しかし面白いことに、そうやって取り憑かれているはずなのに、「なんて洒落たこと言うなぁ」と苦笑しながらも、もう引き返せなくなる。
深夜のカーブミラー越しに街灯が揺れている様子を見て、あるいは電車内で隣人との会話を耳にする時──そんな時間帯に読むと特に深みが出る。眠たい目を擦ってそれでもページを進めるうちに、ふと思い出すことがある。過去に出会った人たちが、今となってはとても遠くなったけれど、あの頃の自分を思い起こさせてくれるものがある。おそらくこれが、作者が狙っていたかった「思い出」なのだろう。
だが最も印象的なのは、読者が自らの影を照らしてしまうということである。入間くんを通して描かれる『普通』とは一体どういうものなのであろうか。当たり前に過ぎすぎて疑わない日々のルーチンに、突然奇跡が降ってきてそれを破る──それに対して人はどのように反応するべきなのか。答えを探すよりも、まずこの作品の温度を感じ取ることが重要だと思う。そしてきっと、次の日に起きたことで少しくらい変わってしまっていることを知るだろう。




